「地底特急モグラット号が、まもなく出発いたします。」
アナウンサーの声に、人々はモグラット号に乗りこんだ。行先は日本の
真下にある南アメリカのブエノスアイレス中央ステーション。わずか約
40分たらずで到着するのだ。モグラット号は、地球の直径にあたる13,000
キロメートルの地中を目にもとまらないものすごい速さで通りぬけてしまう
からだ。
これは物が落ちる...落体の法則を利用したもので、飛行機や電車のように
動力のもとになるガソリンや電気はまったくいらない。
地球の引力に引っ張られて、真空のトンネルの中を音もなく進むのである。
その速さは地球の中心付近では、秒速11.2キロ以上にもなる。そして中心
を過ぎると、今度は逆に地球の引力に引っ張られて速度が落ち、ブエノス
アイレスに着くころにはスピードはちょうどゼロになるので、乗客はおり
られるわけだ...。(本文より)
何とも、夢のような話ですが、これは子供の頃に読んだ本で、学研が発行
していた、「ジュニアチャンピオンコース」の「もしもの世界」という本
の中の「もしも地球の中に入っていけたら」という記事。先日実家の本棚
にあったのを見つけ、懐かしさのあまり持ち帰ってきたものです(笑)
当時、学研といえば「科学」と「学習」が有名で、団塊ジュニア世代以上
の方なら、お世話になった方も多いかもしれません。
近所の書店でタイトルだけで面白そうだと買い求め、家に帰ってから中身
を見てみると...。
想像していた内容とは違い、書いてあるのは「もしも酸素がなくなったら」
「もしも日本列島が海に沈んだら」「もしもペストが大流行したら」
「もしも東京に大地震が起こったら」といったネガティブな想定による暗い
未来ばかり。しかも、本当に起こったらこうなるという地獄絵図が生々しく
描かれていました。
この本、出版されたのが、1973年。ちょうど五島勉氏の「ノストラダムスの
大予言」がベストセラーになり、オイルショックや、公害が社会問題化し、
「終末論」が話題となっていた頃です。
今にして思えば、小学生にこんな恐ろしい内容(笑)の本を読ませて、その後
の人生に与える影響など、出版元は考えなかったのかと思ってしまいます。
最近では書店の児童書コーナーを覗いてみても、もうこの類の本は出ていない
ようです。昔と違って児童書にもいい加減なことを書く本は減りきちんとした
学説に基づいて専門的に書かれたものが多くなってきています。
かといって、かつてのこうした読み物が子供にとって変な影響をおよぼすだけ
のものだったと全面的に否定するつもりはありません。
なぜならば、私自身も「読み物」としてのリアリティ豊かな「面白さ」を与え
られ、あくまで「フィクシション」として楽しんだのですから。要は、「情報」
を取捨選択する判断力を育んでくれた第一歩であったと考えるのです。
こんな記事もありました...。
長生きしたいものですね...。
ちなみに、この本をAmazonマーケットプレイスで検索したら、5,000円からで
出品されていました。入手困難品とはいえ、定価の10倍以上って、一体...(笑)
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- 2015/03/01(日) 18:05:00|
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